(03/04)
3月4日 木曜日
サラマッドは引き続きトラックのリサーチ。私は新企画のため画家のハニ・デラ・アリさんとギャラリー回り。まだ企画案が出たばかりの段階なので詳しくは言えないが、ハニさんを中心とした若いイラク人アーティスト達の作品を観に行った。ハニさんのガイドと同じくアーティストで女性彫刻家のマヤサ・アル・ムクダーディさん−Mayasa
Al Mukdadi-の通訳つきという何とも贅沢なバグダッドギャラリーツアーである。著名な画家の作品が多いアッカドギャラリーではイズマエル・ファタさん-Ismael
Fatah Al Turuk-のグラフィック・アートの制作現場まで見ることができた。
最も美しくサダムの像を制作することが出来るということで戦前は引っ張りだこだった画家で彫刻家のナティック・アル・アルーシーさん−Natiq
Al Alusi−のギャラリーでは、本人から面白い話を聞いた。もちろん好きで作っていたわけではなかったにしろ、自分で作ったものを含め全てのサダム像が壊されてしまったことについてどう感じているのかと質問したところ、米軍やイラク人に破壊されたサダム像はほとんど価値のないものばかりで、彼の作品を含め質の高いものはあとで高く売るために壊される前にちゃっかりアメリカに渡って保管されているそうである。
ハニさんも尊敬する80歳の大老ヌーリー・アル・ラーウィーさん−Noori Al Rawi−のギャラリーでは、彼の音楽的で幻想的な色彩と光を放つ作品群もさることながら、42歳の画家で彫刻家のフアード・ハムディさん-Fuad
Hamdi-の作品にも魅了された。とくに驚いたのは、ウラン兵器が原因と思われるがんや白血病に苦しめられる子どもたちの姿を模ったブロンズ像である。なんと死を目前とした子どもたちの体に、直に石膏を塗って型をとったものから創りあげたものだという。現在一歳になる自らの子どもも先天性異常で生まれてきたというフアードさんは、このようにデスマスクならぬデスボディから生まれた作品によって、アメリカ軍が使用したウラン兵器の放射能汚染による静かなる大量虐殺を告発し続けているのだ。
夕方サラマッドがカルバラプロジェクト用のトラックのリサーチから戻る。何とか3千ドル以内でいい中古のミニトラックを見つけてくれた。年式は1980年と古いが、日産製でエンジンとタイヤはしっかりしているので問題なさそうだ。しかも輸入されたばかりの車ではなく、過去イラクで登録が済んでいるものなので、今後新政権が発足して新たに登録する際も楽に済むとのことである。早速購入を決めると新品のタイヤを2本もサービスしてくれた。余談であるがイラクの新しいナンバープレートのアラビア数字のデザインは全てハニ・デラ・アリさんが請け負ったそうである。つまりそのうちイラク国内どこでもハニさんの作品が見られることになるわけ