
イスラーム教スンナ派とシーア派の宗派間暴力ばかりが目立って報道されてきたイラクですが、その陰でキリスト教徒の受難も続いています。かつてはスンナ、シーア両派の住民たちが平和裏に暮らしてきたように、クリスチャン(キリスト教徒)もイラクの人口の3~4%と少数派ながらムスリム(イスラーム教徒)と共存してきました。はじめてバグダードを訪れたとき、教会もたくさんあるんだなあと驚いたものでした。イラク占領後の宗派、宗教間暴力は共に、旧政権崩壊後の政治権力闘争が引き金となっていて、やがて一般住民が巻き込まれていくようになったと考えられています

*写真は2004年8月相澤撮影。PEACE ONバグダード事務所近くのキリスト教会付近の爆破現場。(当時のブログ記事参照)
この度、ムスリムである現地スタッフのサラマッド&アマラが、バグダードのキリスト教会を訪れ、孤児院の責任者でもあるシスターから、イラクのクリスチャンの今を聞いてきました。
「教会が爆破されたり、命を狙われたりなど迫害が続き、多くのクリスチャンがイラクから逃れていきました。かつてイラク全土で20万家族はいたというのに、今ではわずか6千家族。多くは北部のクルド人自治区、もしくは他国に避難しています。住む家も仕事も追われ、多くの家族は離ればなれになってしまいました。中には、子どもたち全員、もしくは両親共に失ってしまった家族も少なくありません。
孤児も多く、彼らは殺されるのを恐れて外出できず、働くことも学校で学ぶこともできていないので、教会ではこれまで彼らを支援し続けてきました。しかし私自身も怖くてこの三年間ほとんど教会の外に出ていません。食料などを買いにいってくれるドライバーが無事に戻ってくるまでいつも心配でなりません。病気になったときは、お医者さんに教会まで来てもらうようにしています。イラク人なら誰もがこうした恐怖の中で生きてきたのですが、特に私達クリスチャンは外見によって真っ先に狙われてしまうのです。
爆弾が爆発するとき、そこにいるのがクリスチャンかムスリムかなどわかりません。イラクでは皆飢えと殺戮の恐怖に怯え、助けを必要としています。日本の皆さんの評判はとてもいいです。親切で慈悲深い人々だと聞いてきました。宗教は異なっていても、私たちは皆さんに大いなる平和をお祈りします。そして、お互いが助け合い、また、同じ兄弟である私たちクリスチャンとムスリムたちのことも助けてくれるようにお願いします。私たちは皆兄弟であり、いつだって助け合って生きていくべきなのです。宗教は善き行動のためにあり、命は誰もが持っている権利なのです。」

殺害や誘拐を恐れて、今ではほとんどの教会は閉ざされてしまい、バグダードのキリスト教孤児院にいる子どもたちはわずか7人。しかも教会の予算の多くが避難した人々のために使われていて、孤児院は資金難に苦しんでいます。そこで、少しでも子どもたちの食費、被服費、学習費に役立ててもらおうと、小額ですがとり急ぎの現金寄付をお渡ししました。シスターによると、こうしてムスリムから支援を受けることで、問題は一部の犯罪者なのであって、住民同士はお互い助け合って生きているという強いメッセージにもなるとのことです。